これから先子どもたちが生きる未来の社会は、「AI(人工知能)化」「グローバル化」「多様化」など、環境が大きく変わることが予想されます。そんな時代だからこそ、高度な「思考力」が必要になると言われ、2020年度から新しくかわる教育課程でも、「思考力」の育成に重点が置かれています。では、どうすれば、子どもの「思考力」は伸ばせるのでしょうか。
東京大学名誉教授・白梅学園大学名誉学長の汐見稔幸先生にお話をうかがいました。
思考力のベースにあるのは「言葉」。
日常の中で、どんどん増やせる
― 子どもの「思考力」を伸ばすために、どのようなことをすればよいのでしょうか。
「思考力」とは、いろいろな力が合わさって身についていくものであり、「こうすれば身につきます!」という魔法はありません。たとえば、人が物事を″分かっていく″過程において、まずは「分ける力」というものが、重要になってきます。それは、人はモノの世界を「分けて」、その分けたものに「言葉」としてのレッテル(ラベル)を貼って、その言葉を覚えて、レッテル同士をつなげて、物事を理解していくからです。
 
子どもに話すときも「大きいね」「小さいね」「あついよ」「冷たいからね」などと「分けて」レッテルを貼り、それをより細やかにしていきます。「大きいのは池」「小さいのは水たまり」あれは「赤」これは「オレンジ」などです。
 
このように、幼児期のうちに、どれだけ丁寧に「分けて」、「言葉」を覚えられるかということで、物事を認識する精度が全く違ってきます。
 
「分かる」ということは「分ける」ということなのです。そういう意味では、「思考力」のベースには、さまざまな分ける力とそれを表した「言葉」があります。
 
また、3歳ぐらいになると、ブロックで遊んでいるときに「あれ」「ちょっ」「んー」といった言葉を使っているのか、使っていないのか、面白いひとり言が出てきます。実はこれはとっても大事なことで、「人とのコミュニケーション」にしか「言葉」を使っていなかったところから、頭の中で、「言葉を使って考える」ということが始まっているのです。そういうときには、しめしめと思い、少しぐらい言葉遣いが間違っていたとしても、「違うでしょ」などと言わずに、そっと見守ってあげてくださいね。
 
学力に最も関係するのがこの分ける力とそれを言葉にする力です。だから親の務めは、日常生活の中で、さまざまな分ける作業(試行錯誤)とそれを表す言葉を理解する手助けをしてあげること、そしてひたすら子どもの話を聞いてあげることだと思います。「それでそれで…」と相槌をうち、共感する。また、子どもが言葉にならないときは、「〇〇〇なのね~」と言葉を引き取り、教えてあげることで、子どもは「ああ、こう言えばいいのか」ということを「対話」から学び、言葉を増やしていけます。
試行錯誤する体験で
「思考力」は伸びる
また、思考力を伸ばしていくには、実際に「ものをつくる」体験がとても大事です。ものをつくるときに、人はよく考え、試行錯誤します。「こうすればいいかな」「次はこうやってみよう」と考えたり、失敗しても、「もう一回やってみよう!」とあきらめずに考えたりする体験を通して、見通す力や反省する力、視点を変える力などの「思考力」は伸びていきます。
 
また、保育園や幼稚園で、上手な指導がされているところは、遊びや工作などで、「手順図」を子どもたちに書かせることがあります。「この次はどうするの?」「こっちの場合は?」と子どもたちに投げかけながら子どもたち自身で手順図を作っていくことで、子どもたちは自分で考えますし、集団の場合は、そのイメージを「共有」することもできます。また、その体験を通して、はじめに「手順図」(計画の見える化)を作っておいたほうがいいということ自体も学べます。
 
「手順を考える」ということは、人生においてもとても大事なスキルですよね。「見通し」を自分でしっかり立てられるようになるからです。また、手順通りにやっても、失敗することがありますが、大事なことは、失敗したときに、そこから何を学ぶのかということです。そこから人間は成長できるからです。
 
思考力を伸ばしたいのであれば、子どもが失敗したり、うまくいかずに「やーめた!」となったときに、「どうしたの? ここまでうまくいってるじゃない。ここからもう一度考えてごらん」、「どこでうまくいかなかったのか見つけたら、次はきっとうまくいくよ」と教えたり励ましたりしながら、あきらめないで考える習慣をつけてあげることで、思考力は伸ばしていくことができるのではないでしょうか。
 
―いかがでしたでしょうか?
汐見先生には「子どもの思考力の伸ばし方」についてお話をおうかがいしました。
 
<こどもちゃれんじ>でも、これから必要となってくる「思考力」を育むことに重点を置いた「思考力特化コース」を年中さんからご用意しております。答えがひとつとは限らない課題や視点を変えて考える課題、自分の考えたことを整理して相手に説明する課題など、試行錯誤しながら考える体験を通して、これからの子どもたちに必要な思考力を伸ばしていきます。
お話を伺った人
汐見 稔幸(しおみ としゆき)先生
東京大学名誉教授・日本保育学会会長・白梅学園大学名誉学長
1947年 大阪府生れ。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。
自身も3人の子どもの育児を経験。現代の父親・母親の応援団長を目指している。
小西貴志氏らと21世紀型の身の丈に合った生き方を探るエコビレッジ「ぐうたら村」を建設中。
これから先子どもたちが生きる未来の社会は、「AI(人工知能)化」「グローバル化」「多様化」など、環境が大きく変わることが予想されます。そんな時代だからこそ、高度な「思考力」が必要になると言われ、2020年度から新しくかわる教育課程でも、「思考力」の育成に重点が置かれています。では、どうすれば、子どもの「思考力」は伸ばせるのでしょうか。
東京大学名誉教授・白梅学園大学名誉学長の汐見稔幸先生にお話をうかがいました。
思考力のベースにあるのは「言葉」。日常の中で、どんどん増やせる
― 子どもの「思考力」を伸ばすために、どのようなことをすればよいのでしょうか。
「思考力」とは、いろいろな力が合わさって身についていくものであり、「こうすれば身につきます!」という魔法はありません。たとえば、人が物事を″分かっていく″過程において、まずは「分ける力」というものが、重要になってきます。それは、人はモノの世界を「分けて」、その分けたものに「言葉」としてのレッテル(ラベル)を貼って、その言葉を覚えて、レッテル同士をつなげて、物事を理解していくからです。
子どもに話すときも「大きいね」「小さいね」「あついよ」「冷たいからね」などと「分けて」レッテルを貼り、それをより細やかにしていきます。「大きいのは池」「小さいのは水たまり」あれは「赤」これは「オレンジ」などです。
このように、幼児期のうちに、どれだけ丁寧に「分けて」、「言葉」を覚えられるかということで、物事を認識する精度が全く違ってきます。
「分かる」ということは「分ける」ということなのです。そういう意味では、「思考力」のベースには、さまざまな分ける力とそれを表した「言葉」があります。
また、3歳ぐらいになると、ブロックで遊んでいるときに「あれ」「ちょっ」「んー」といった言葉を使っているのか、使っていないのか、面白いひとり言が出てきます。実はこれはとっても大事なことで、「人とのコミュニケーション」にしか「言葉」を使っていなかったところから、頭の中で、「言葉を使って考える」ということが始まっているのです。そういうときには、しめしめと思い、少しぐらい言葉遣いが間違っていたとしても、「違うでしょ」などと言わずに、そっと見守ってあげてくださいね。
学力に最も関係するのがこの分ける力とそれを言葉にする力です。だから親の務めは、日常生活の中で、さまざまな分ける作業(試行錯誤)とそれを表す言葉を理解する手助けをしてあげること、そしてひたすら子どもの話を聞いてあげることだと思います。「それでそれで…」と相槌をうち、共感する。また、子どもが言葉にならないときは、「〇〇〇なのね~」と言葉を引き取り、教えてあげることで、子どもは「ああ、こう言えばいいのか」ということを「対話」から学び、言葉を増やしていけます。
試行錯誤する体験で「思考力」は伸びる
また、思考力を伸ばしていくには、実際に「ものをつくる」体験がとても大事です。ものをつくるときに、人はよく考え、試行錯誤します。「こうすればいいかな」「次はこうやってみよう」と考えたり、失敗しても、「もう一回やってみよう!」とあきらめずに考えたりする体験を通して、見通す力や反省する力、視点を変える力などの「思考力」は伸びていきます。
また、保育園や幼稚園で、上手な指導がされているところは、遊びや工作などで、「手順図」を子どもたちに書かせることがあります。「この次はどうするの?」「こっちの場合は?」と子どもたちに投げかけながら子どもたち自身で手順図を作っていくことで、子どもたちは自分で考えますし、集団の場合は、そのイメージを「共有」することもできます。また、その体験を通して、はじめに「手順図」(計画の見える化)を作っておいたほうがいいということ自体も学べます。
「手順を考える」ということは、人生においてもとても大事なスキルですよね。「見通し」を自分でしっかり立てられるようになるからです。また、手順通りにやっても、失敗することがありますが、大事なことは、失敗したときに、そこから何を学ぶのかということです。そこから人間は成長できるからです。
思考力を伸ばしたいのであれば、子どもが失敗したり、うまくいかずに「やーめた!」となったときに、「どうしたの? ここまでうまくいってるじゃない。ここからもう一度考えてごらん」、「どこでうまくいかなかったのか見つけたら、次はきっとうまくいくよ」と教えたり励ましたりしながら、あきらめないで考える習慣をつけてあげることで、思考力は伸ばしていくことができるのではないでしょうか。
 
―いかがでしたでしょうか?
汐見先生には「子どもの思考力の伸ばし方」についてお話をおうかがいしました。
<こどもちゃれんじ>でも、これから必要となってくる「思考力」を育むことに重点を置いた「思考力特化コース」を年中さんからご用意しております。答えがひとつとは限らない課題や視点を変えて考える課題、自分の考えたことを整理して相手に説明する課題など、試行錯誤しながら考える体験を通して、これからの子どもたちに必要な思考力を伸ばしていきます。
お話を伺った人
汐見 稔幸(しおみ としゆき)先生
東京大学名誉教授・日本保育学会会長・白梅学園大学名誉学長
1947年 大阪府生れ。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。
自身も3人の子どもの育児を経験。現代の父親・母親の応援団長を目指している。
小西貴志氏らと21世紀型の身の丈に合った生き方を探るエコビレッジ「ぐうたら村」を建設中。
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