小児科の先生に、新型コロナウイルスの
正しい知識と対応方法を教えてもらいます小児科の先生に聞く
新型コロナウイルスへの対応方法(第2回)
今、お子さんに
してあげられる
新型コロナウイルス対策2020.03.06更新
お伺いした先生榊原洋一先生
医学博士、CRN所長、お茶の水女子大学名誉教授、ベネッセ教育総合研究所常任顧問、日本子ども学会理事長
子どもにどんな様子が見られたら
感染を疑うべき?
感染者が多く発生している中国を含め、子どもの感染例は少ない状況(2020年3月6日現在)ですが、これまでにわかっているおもな症状は、
・発熱:37~38度程度の熱が出る
・咳:痰がからむような咳ではなく、から咳が出る
・筋肉痛や倦怠感
です。
子どもは公園や外に
遊びにいってもいい?
ウイルスは自然界では生き延びられないという性質があります。つまり、密閉された室内よりも、自然あふれる外のほうが安全ということです。ウイルスは人の中に生息するため、人が集まるところがウイルスのリスクがあるということです。さほど人が多くない公園などであれば、普段と変わらず外で遊ぶことは問題ありません。
ただし、すべり台やブランコなど、遊具にも人の手を介してウイルスが付着している可能性はあるため、触った後は手を洗う、または消毒をするということを心がけましょう。手をきれいに保つことを意識すれば、人混み以外の外遊びも室内遊びも、あまり変わりありません。
マスクはする?しない?
何が正しい?
感染を防ぐために何よりも大切なのは、手洗いです。嫌がるお子さんに無理やりマスクをさせる必要はありません。ご家庭の事情で、人混みや密閉された人の集まる場所に行かなければならない場合は、マスクをした方がよいと思いますが、必ずしも必要ということではありません。
赤ちゃんや小さい子どものために、
大人が気をつけることは?
現在までわかっている世界的な症例でも、乳幼児が感染したケースが少ない状況(2020年3月6日現在)で、赤ちゃんや小さいお子さんが感染しやすいということはありません。一番気をつけるべきことは、周囲の大人が手をきれいに保つことです。家族の中に患者さんがいないのであれば、家の中でマスクをしてお子さんに接する必要はありませんが、大人は手洗い・消毒を意識的に行う必要があります。
新型コロナウイルスに限らず、ウイルス対策としては、通常行われている煮沸消毒やアルコール消毒は有効です。煮沸消毒であれば、5~10分程度の煮沸で一般的なウイルスは死滅します。
子どもに守らせるべきことは?
ある程度の約束などが理解できる年齢になったお子さんには、次のような約束をしてみてはどうでしょうか。
1)お友だちの「顔」に触らない
2)「すもう」「おしくらまんじゅう」のような遊びは、しばらく我慢
3)机や他の人に触ったら、こまめに手を洗う
子どもは大人の不安を敏感に感じとっています。このような約束をするときも、「守らないと怖い病気になるんだよ!」など、脅すようなことを言わないようにしましょう。
榊原先生に聞く「ウイルスの知識」
ウイルスを正しく理解する
そもそも、「ウイルス」と「菌」の違いは何でしょう。「菌」というのは人間と同じ生物で、細胞があります。一定の水分や養分があれば、自分で増殖して生きていくことができます。一方、「ウイルス」というのは「菌」よりもずっと小さく、他の生物の生きている細胞の中でしか生きられないものです。
一般的なウイルスは、自然界では数時間(3~5時間)しか生きられないといわれています。冷凍されたり、煮沸されたものからは、ウイルス感染しないといえます。 (※)
※気温や湿度環境などにより、5日程度生存するケースもあります。
ウイルスの感染経路とは
たとえば、1日中つけていたマスクを外し、何の気なくテーブルに置くとき、たいがい内側を上向けに、外側を下にして置くと思います。まさにこのようなときに、マスクの外側からコロナウイルスがテーブルに付着し、そこを触った手で顔をさわったりすることが、起こりやすい感染経路といえます。
新型コロナウイルス感染で原因とされている「飛沫感染」「接触感染」で最も感染経路になりやすいのが「手」と「顔」です。手を通じて、顔の「目」「鼻」「口」を入り口にしてウイルスが入ることで感染するのが「接触感染」です。「飛沫感染」は、ウイルスのいる唾などが直接粘膜についたり、吸い込んだりすることで起こります。
不特定多数の人が触るドアやエレベーターボタン、つり革、手すり、テーブルなどにウイルスが付着し、それを触った手で目・鼻・口を触るという流れをよく理解し、その経路を断つことを意識することで感染を防ぐことができます。