毎日忙しいママやパパは、ついつい生活時間が乱れがち。でも子どもには「早く準備して」「ごはん食べなさい」とイライラしてしまったり……。ストレスなく生活リズムをつけるには?
保育・子育ての専門家であり、NHK Eテレ「すくすく子育て」でも活躍されている井桁容子先生にお話をうかがいました。
- イラスト:成瀬 瞳
- イラスト:成瀬 瞳
夜の睡眠がいちばん大事
生活リズムは、赤ちゃんの頃から成長とともにととのってくるものですが、いちばん大切なのは、夜の睡眠。
夜間にぐっすり寝て、朝きちんと起きることは、成長ホルモン、内臓の働きや免疫力など身体の発育発達をよくするだけでなく、自律神経をととのえ、意欲や人との関係性など心の育ちにも深く関わっているといわれています。子どものころの習慣が、その後にも影響を与えますし、大人にとってもこれまでの生活を規則正しくしていくチャンスともいえますので、家族みんなで意識していくようにするとよいでしょう。
5歳くらいまでは、20時頃から部屋を暗くして、睡眠に入りやすくして、21時までには眠りについていたいもの。夜になったら、リラックスして眠りに入りやすくするために、テレビやスマホ、タブレットなどブルーライトは見せず、心地よいクールダウンができるように心がけて。
また、寝つきのよしあしは、子どもの体質や個性にもよるもの。また、「早く寝て欲しい!」と親がイライラしてしまいがちですが、そのような気持ちは子どもに見抜かれてしまい、反対にリラックスできません。
まずは、寝室を暗く、静かにする、寝室やパジャマで暖めすぎないなど環境をととのえて。また、小さな声で子守歌などを歌う、静かな音楽を流すなど、毎日、寝る前に同じことをする「入眠儀式」をしてみましょう。もちろん、一緒に添い寝してもいいでしょう。そのときに一緒に寝てしまってもいいのです。「やることがあったのに!」と思わず、「私も疲れていたんだな。睡眠がとれてよかった」と思うようにしてみて。私も何度もそんなことがありました(笑)。
おふろや食事も「心地よさ」重視
20時くらいから睡眠準備に入ると、その前の入浴や夕食の時間も決まってきますね。ここで気をつけたいのがまずは「睡眠優先」、そして「子どもの心地よさ」。
おふろに入る前に、子どもがうとうとしてしまったら、時には、温かいタオルで顔と手足を拭いて、着替えてそのまま寝てもよいと思います。気温の高い時期ならば、朝にシャワーでさっぱりとするのも気持ちよい目覚めになります。
なかなかおふろに入りたがらない子には、水遊びの道具を用意して、楽しい場所という印象になるように工夫しながら、「きれいになって気持ちいいね」「いい匂い」と清潔でいることは気持ちのいいことだと伝えましょう。忙しい毎日ですが、大人もお風呂に入っている時は、ほかのことを考えないで、お子さんと楽しく気持ちよく過ごす時間と決めるのも、お互いにとってよい時間になると思います。
また、風呂嫌いの原因が、お湯の温度が高すぎる場合もあります。子どもは、40度前後のぬるめのお風呂が好きですし、ぬるいお風呂に入ったほうが睡眠に移行しやすいといわれています。
食事の時間も大事な生活リズムです。規則正しい食事時間は、規則正しい排便の習慣になるので、健康にも直結します。
日によっては子どもが、おなかがすいて待ちきれないこともあるでしょう。そんな時は、「きょうはフルコースです」と、先に簡単にできそうな順で野菜など、できたものから、素敵な大人用のお皿に、ひとつずつ順々に出してあげると、楽しんで食べたりしますよ。誰かと一緒に食べるとおいしく感じるのは、人間だけの感覚です。できれば、一緒に食べることを心がけたほうが、心の栄養も一緒にとれます。そのためには、ときには納豆ごはんだけの日があっても大丈夫。1週間とか1か月をトータルで見て、適度に栄養バランスが取れていればいいんですよ。
ただ、ごはんの前にお菓子を食べて、食事が食べられないとか、夜遅くまで起きていたから、起きられなくて朝ごはん抜きとかは、親子ともども避けましょう。また、過食や味覚に影響するので食事どきに、テレビや遊びに気を取られないような環境にも気をつけて。
生活リズムがととのうと、「ぐっすり寝ると心地いい」「朝早く起きると気持ちいい」「おふろに入ると気持ちいい」「ごはんを食べるとおいしい」という心地よい体験は、子どもに自然に身についてきます。そのためには、まずはお母さんお父さんも無理せずに、子どもとの時間を楽しむ心がけをしていきましょう。「急がば回れ」です。
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お話をうかがった人
井桁 容子(いげた・ようこ)先生
保育・子育てカウンセラー。非営利団体「コドモノミカタ」代表理事。東京家政大学が併設する乳幼児の保育・研究を実践する研究機関にて42年間勤務。NHK Eテレ「すくすく子育て」はじめメディア出演や講演、『「ていねいなまなざし」でみる乳幼児保育』など著書多数。